2018年度 公益社団法人 鎌倉青年会議所 理事長所信
理事長 樋渡 悠浩
公益社団法人 鎌倉青年会議所 まちづくりビジョン(1991年制定)
「思いやりのある鎌倉 歴史と未来がふれあうまち
人つどうまち 心かようまち」
公益社団法人 鎌倉青年会議所 中期ビジョン(2014年制定)
「IZA!鎌倉」〜刻を紡ぐまち まちが育むひと ひとが創るまち〜
2018年度 テーマ 「真の社会人となろう」
2018年度 スローガン 「社会と人をつなぐ」
【はじめに】
我々が生きる日本は、物質的に貧しかった時代から物が溢れる豊かな社会となり、現代においてはあらゆる情報を手に入れることが出来、更には情報を受け取るのみならず誰しもが容易に個人の意見を多方面に発信出来る時代へと変化して参りました。この様な時代の流れの中で、情報技術の発展は我々に大きな恩恵をもたらす反面、人としての修養をせずとも、経験をせずとも、あらゆることを知っているかの様な錯覚を起こさせることもまた事実であると思います。これらの変化は時代の流れでありそれ自体の是非を語れるものでも、変えられるものでもありません。しかし、この体験の錯覚ともいえるようなものが本来であれば人と人との関わりの中からこそ学べる修養の機会より遠ざけ、人と人との関りからなる地域の繋がりを薄め、ひいては、自らの住み暮らすまちへの関心をも失わせる様になってきているのではないでしょうか。そしてこの様な地域と人との関りへの無関心が、働いて収入を得さえすれば社会人と呼ばれる現代の価値観を生み出すと共に、本来であれば地域社会における繋がりの力をもってすれば乗り越えられた問題の解決をも阻んでいるのではないかと考えます。このまちが現在のようなまちであることは当たり前ではありません。このまちの多くの諸先輩方が社会の一員として己の利益を鑑みずこのまちの未来に必要なことを考え実践されてきた結果であります。そして我々も諸先輩方と同じく地域の人達と積極的に関わることで己を磨き、社会の一員であることを強く自覚することで、社会と人とを繋ぐ真の社会人となる必要があるのです。本年の鎌倉青年会議所は、あなたがいるからこのまちの未来は明るい、そう言われる真の社会人がこのまちに一人でも多く広がっていくことを目指すと共に、社会と人とが繋がり皆で支え合う成熟した地域社会の実現に向けて前進して参ります。
【このまちを知る、真の社会人としてのまちづくり】
我々の暮らす鎌倉市は17万人を超える人口を抱え、今や国内のみならず海外からも多くの方が観光に訪れ、他地域からの移住者も多い魅力あるまちであります。しかし、この様な現状の中、このまちに住み暮らす我々でさえも自らのまちをメディアの画面を通して流される歴史ある古都として、観光都市として、ひとまとまりに認識をしてしまいがちであり、その一方に存在する、我々が日々暮らすまちとして、都市機能を持ったまちとしての鎌倉は忘れられがちなのではないでしょうか。我々はまちづくりを考え実践する団体です。しかし、我々会員がまちの現状を正確に描く努力をしないのであれば、その活動は他を追随するだけのものになってしまうでしょう。このまちが持つ文化を、風土を、都市を、この広い鎌倉の地域の現状を正確に再認識し、それぞれの特徴をよく学び考える必要があり、その上で知識見識をもった社会人が正しい認識のもとに事業を発信していくことこそが、このまちから求められる真のまちづくりであると考えます。
そして、当会議所の5周年事業として開催され、長い年月を経て当会議所の行うまちづくりの中心的な事業へと発展してきた慈善茶会も本年で50回目を迎える年となりました。この永きに亘り開催できますのは、茶道裏千家千宗室御家元様をはじめとするご宗家の皆様、毎年素晴らしい会場をお貸しいただくと共に多大なるご協力を頂いております大仏殿高徳院佐藤孝雄住職様、地域の協働団体の皆様、そして会場にお越し下さいますお客様のおかげであり、ここに深く御礼を申し上げます。人と人との関りが薄れてきている現代において茶道の精神の中に流れる他人を思いやり感謝する心を改めて考え直すことで、社会と人との関りの在り様を考える場と致します。また、この記念すべき年を迎えるにあたり本事業をより一層このまちから必要とされる事業となるよう変化、進化させて参ります。そして、この50回目の慈善茶会を開催する記念すべき年を共に祝い、永きに亘りご協力を頂いております関係者の皆様の御懇情に感謝を申し上げる機会を設けることで、本事業の更なる発展の礎としたいと考えます。
【誇りをつなぐ会員拡大】
地域のことに関心なんて無い、行政や余裕のある誰かがまちづくりをすればいいのではないかと言っていた若者がまちの未来について語りだす、そんな環境が青年会議所にはあります。誰もがはじめからまちづくりを考えていたわけではありません。しかし、青年会議所活動を仲間と共に行う中で、少しずつまちへの関心を持つようになり、自らが行動を起こすように変わってくるのです。地域をつくるのは一人ひとりの考えや行動であり、そしてなにより人そのものであります。地域について語れる成熟した大人が少なくなればそれに伴い必ずやそのまちは衰退するでしょう。自ら決断しこの会に入り、そして続けているあなたは入会する前と比べて変わったのではないでしょうか。そのことに誇りを感じるのであれば、次へと伝えていく必要があるはずであり、そのことこそが会員拡大の本質であると考えます。そしてこの意義を多くの方に知って頂き少しでも共感していだく事業を行うことで、会員の拡大に繋がると確信致します。また、会員拡大は青年会議所において全体事業であるといわれます。本年は、拡大を担当する委員会のみの活動にとどまらず他委員会とも連携がとれる全体事業としての仕組みを考えると共に、隣接する地域の仲間と活動することで、自らの地域とは考えの異なる人達と意見を交わし、このまちを外から再認識することでこのまちに合った会員拡大手法の確立を目指します。
【社会と人をつなぐ広報交流】
まちづくりを考え実践する団体として日々研鑽を積んでいる青年会議所ではありますが、このまちの未来を明るくする為には、自らの努力のみならず地域の皆様と手を取り合って進んで行かなければならないと考えます。「早く行きたければ一人で行け、遠くへ行きたければ皆で行け」という言葉を聞いたことがあります。明るい豊かな社会をつくるという、この遥か遠くに見える目的地にたどり着くためには、より多くの皆様と共に進む必要があり、その為にも広報という言葉が持つ本来の意味に立ち返り実践していく必要があると考えます。広報(PR)とはPublic Relationsの訳であり、誤解を恐れずに言えば、社会の人々との関係のことであります。そして広報活動を行うということは、宣伝や広告の様に単に情報を発信していくものではなく、社会の人々との関係をより良いものへと進化させていく行動のことであり、社会の一部である当会議所と地域社会やそこに暮らす人々とを繋いでいくことこそが我々の目指すべき広報活動であると考えます。そしてその為には当会議所の事業や考えを発信していくことはもちろんのこと、地域の皆様との交流を積極的に図る必要があると考えます。また当会議所内に目を移せば、近年の新入会員の増加と共に、経験の浅いメンバーの割合も増えてきているのが現状です。入会の浅いメンバーが将来当会議所を支えるメンバーへとなっていく為にも、まずは青年会議所活動の入り口としての会員との交流に楽しみをもって参画していくことが重要であると考えます。そしてこれらの繋がりこそが将来に亘り当会議所の揺るぎない基礎となっていくものであると確信致します。
【根となり支える洗練された組織】
仕事や考え、育ってきた環境を異にする個人の集団である我々の組織を同じ目的に向かう強い組織とするためには、骨子となる強力な組織運営が必要です。輝く様な事業も必要でしょう、ですが目的を達成するためには最も小さなことから始めなくてはなりません。当たり前と思われることを当たり前にやりきる。この難しくも当然と思われる行為を確実に行っていくことは全ての運動の原点にあるものであり、公益法人としての適正な組織財務運営はもちろんのこと、活動の核となる総会や理事会等の会議運営を円滑に美しく取り仕切ることで運動の土台と致します。そして、当会議所の長い歴史の中で時の洗礼を受け磨き上げられてきた組織運営手法を尊重し次へと繋げると共に、現代にあった手法を取り入れることでより洗練されたものへと進化させていく必要があると考えます。更には、組織であることのメリットを生かし、会員個々にとっても有益な組織となることを目指します。そして、日本青年会議所本会、関東地区協議会、神奈川ブロック協議会という広がりがある青年会議所において、出会いや修練の場として出向するメンバーには、このまちで頼られる見識をもった真の社会人となれるよう支援致します。
【おわりに】
戦後まもなく日本の発展を思い創設された日本最初の青年会議所である東京青年会議所の設立趣意書の一文にこうあります。「我々青年はあらゆる機会をとらえて互に団結し自らの修養に努めなければならぬと信ずる。」今現在においてもこの志は色褪せません。修練の為の修練ではなく、あらゆる機会を自らの修練として捉え成長していかねばなりません。そして、社会の一員としてこのまちに関わっていくことが、社会と人を、ひいてはこのまちの発展に寄与するものであると強く信じます。我々は一人で進む必要はありません、仲間と団結し修練を積み進みましょう。私は青年会議所に入り多くの仲間が出来ました。この仲間と共に苦労を分かち合ってきたことが今の私をつくっており、また私の誇りとなっていることに疑いはありません。この様な機会を与えていただいたことに感謝をしていると同時に次の世代へと繋いで参りたいと考えます。50年を超える想いと大事に磨き上げられてきたこの役職を次へと繋げるその時までしっかりとお預かりをし、全身全霊をかけて全うすることをお誓い申し上げ、2018年度理事長としての所信とさせて頂きます。一年間どうぞ宜しくお願い申し上げます。