理事長所信

2023年度
公益社団法人 鎌倉青年会議所
理事長所信

第59代理事長 片根 竜哉

公益社団法人鎌倉青年会議所 まちづくりビジョン
(1991年制定)

「思いやりのある鎌倉 歴史と未来がふれあうまち
 人つどうまち 心かようまち」

公益社団法人鎌倉青年会議所 中期ビジョン
(2014年改訂)

「IZA! 鎌倉」
~刻を紡ぐまち まちが育むひと ひとが創るまち~

2023年度テーマ

「ウェルビーイング(Well₋Being)」

2023年度 スローガン

「その人らしく ともに生きよう」

はじめに

鎌倉市の人口は、ここ数年約17万人前後で推移しており、ほぼ変わりありません。しかし、鎌倉市の世帯数は増加傾向となっています。人口が増加せずに世帯数が増加する背景には、単身世帯の増加が考えられます。一方、皆さんもご承知のように、日本の人口は2004年をピークに少子高齢化の一途をたどっており、鎌倉も例外ではありません。単身世帯の増加と少子高齢化からは、単身者の高齢化、配偶者の死別による高齢の単身世帯が増えている実態が分かります。それに加えて単身世帯の高齢化の加速には、ライフスタイルや家族の在り方の変化と医療の進歩も関わっています。医療の進歩により以前は救えなかった病気が救えるようになり、病気は治すものから、ともに歩むものへと変化しています。これまで病院や施設で過ごす機会が多かった高齢者や病気やケガにより障害を持った方が、この鎌倉のまちの中にともに過ごすようになっています。鎌倉市では、年齢、病気の有無に関わらず市民が、地域でその人らしく健康に生活していくための福祉サポートの充実や健康増進や生活習慣病の予防として、障害者福祉サービス計画や鎌倉市データヘルス計画を立てサポートを行っています。しかし、地域で暮らすサポートが必要な方は、外出先で何かあった時に対応ができないことや、周りの人の目が気になるという不安をいつも持っています。そのため、地域で暮らすといっても自宅や限られた生活圏で過ごすことが多い現実があります。また、高齢者や病気やケガにより障害を持った方が、周りにいることも知らずにいる市民も多く、お互いを知る機会がありません。お互いの特徴を知ることが出来ずにいることは、地域の人々の安心・安全やその人らしく健康に生活していくことの障壁となります。
誰もがその人らしくともに暮らせるまちには、相手の目線や立場になって考えることが必要です。本年度、鎌倉青年会議所は当たり前の生活を過ごせない人も過ごせる人も、誰もがその人らしく生活できる、人に寄り添った地域社会の実現に向けて邁進して参ります。
【地域でともに学び、ともに育ち暮らすまちを目指して】
人は、幼少期、青年期、壮年期、老年期と多くのことを経験し、命の最期を迎えます。命の最期は、お金を持っている人もいない人も、地位や名誉を持っている人もいない人も、その時は等しく訪れます。しかし、誰にでも平等に与えられた命の中で、どこかで障壁にあたらない人もいればあたる人もいます。その障壁には個人的なもの、環境的なもの、社会的なものとさまざまな要因があります。鎌倉には、その人らしく生きるために共生社会の実現を目指す条例があり、ともに生活して、ともに暮らすことを目指しています。しかし、共生社会の実現を目指す条例が市民全体に十分に浸透しているとは言えません。まず条例と現場の障壁について、私たち青年の力で鎌倉の地域医療、福祉の現場が今どのようなことを行い、どのようなことを求めているのかを市民に見える化をする事業を行います。
次に、当会議所の創立5周年事業として開催され、永きに亘り当会議所のまちづくりの中心事業として行ってきました慈善茶会を本年も開催させて頂きます。この永きに亘り開催できますのは、茶道裏千家千宗室御家元様をはじめとする御宗家の皆様、毎年素晴らしい会場を御貸し頂くとともに多大なるご協力を頂いております大仏殿高徳院佐藤孝雄ご住職様、大仏関係者の皆様、淡交会の皆様、地域の協働団体の皆様、学生の皆様、そして会場にお越し下さいます皆様の御蔭様であり、ここに深く御礼を申し上げます。おもてなしの真髄である利休七則にあるように、どのような環境や状況にある誰もが一服のお茶を、同じ空間、同じ時間で、ありのままに頂くことができる事業として開催致します。そして、慈善茶会にご協力頂きました皆様への感謝を申し上げる機会を設けることで、本事業が当たり前に実施できるのではなく、多くの皆様の支えの基に特別に実施できることを改めて考える時間と致します。
最後に、誰かが助けが必要な時に、助けが求められる関係性を創るまちであるためには、高齢者や病気やケガにより障害を持った方だけでなく、市民の誰もの顔が分かる関係性である必要があります。普段からお互いの事を知っていることで、有事の時には多くの人を助ける一助になります。そこで、市内に住む誰もが楽しめ笑顔になれる交流の場を設け、一人ひとりの顔が分かる関係性が創れる事業を行います。

ともに生きる力を作り出す組織の拡大

青年会議所の運動は青年の力、情熱によって行われ、失敗を恐れずまちのため、人のために利他の精神の基、事業構築を行っています。その運動は、会員ひとりの力ではできません。近年の会員数は、青年人口の減少、多様化し点在しているまちづくり団体の存在、青年会議所の認知度の低下等、さまざまな理由により減少傾向となっています。しかし、鎌倉のまちには、情熱を持った青年が多く集い、新しい文化を創ったり起業をしたりしています。その青年達が、青年会議所の理念に共感し自然と集まってくる組織である必要があります。そのためには当会議所に今いる会員が、一所懸命に今を楽しむことが必要です。会員が楽しむことは、周りの青年からも当会議所に興味を持ち、情熱ある青年が自然と集まってくる組織と変化するきっかけとなります。
まず、拡大中長期計画の最終年度となる本年は、これまでの拡大活動の是非を行い、計画が実行出来ない理由を調査し、実行可能であれば実行し計画の今後の継続、修正の判断を行っていきます。次に、当会議所の魅力ある事業を多くの市民に知ってもらうために、当会議所のメンバーが輝けるようにブランディングし、市内にともに暮らす誰もが当会議所のメンバーや当会議所を認知する事業を行います。
そして、市民に当会議所の運動を認知してもらい、青年会議所の運動に誰もが参加するだけでなく、地域でともに生活している高齢者や病気やケガにより障害を持った方との障壁の相互理解が出来る方法や無くす方法を、市民とともに考える事業を行います。
近年、会員数の減少により入会数を追い求めるようになり、入会がゴールとなっている可能性があります。入会を目的にするのではなく、相手が何を求め、当会議所の運動にどれだけ共感してくれたかが重要になります。そして、青年会議所で学ぶ一つのことに、人は人でしか磨かれないということがあります。当会議所に入会しても青年会議所の魅力を知る前に退会してしまう会員を、それぞれの個性が活かせる方法で事業に巻き込み、市民とともに事業を創りあげ、市内にある地域医療機関、福祉事務所、一般企業、地域団体の方とともに誰もが安心・安全に暮らせる地域連携事業を行います。

当会議所を市内外へともに周知することを目指して

当会議所は、歴史と伝統ある先輩諸氏の皆様が連綿とバトンを繋いできて頂いたことにより、今年で創立59年目を迎えます。しかし、当会議所が何をしている団体か知っている市民や企業は多くはありません。私達がどんなにまちのために人のために魅力ある運動を起こそうと思って、幾度となく会議をして実行することとなった事業でも、一部の市民にしか運動が届かずにいます。この要因は、私達の想いをどこまで届けるか計画し行動する広報の基本が足りなかったからと考えます。広報活動においてはホームページだけでなくSNSを用いた情報発信を充実させるとともに、鎌倉市内の情報媒体の多くを活用し、迅速な情報発信を行い、世代間を超えた多くの市民に当会議所の運動を伝える活動をしていきます。
まずは、歴史と伝統ある当会議所の設立を先輩諸氏への感謝を伝えるとともにお祝いする事業を行います。しかし、本年は設立をお祝いするだけでなく、当会議所の運動の発信を長きにわたり経験してきた先輩諸氏とともに発信力強化のために、鎌倉内外にいる方誰にでも当会議所運動を効果的に届く手段はなにか、先輩諸氏の経験と時代の変化から効果的な広報手段をともに学び実践することも行います。
次に、効果的な広報媒体、広報手法により鎌倉の自然、歴史や伝統あるまち並み、観光客をもてなす商業等、当会議所が知る鎌倉の更なる魅力を鎌倉に想いを寄せる企業や団体と協力をして発信していく事業を行います。
最後に、神奈川ブロック協議会が開催するブロック大会に参加することで、他の青年会議所の会員と繋がる機会を活かして当会議所の会員の成長へと繋げる事業を行います。そして、2024年に神奈川ブロック大会を鎌倉で開催するにあたり、神奈川ブロック大会鎌倉大会を神奈川21LOMにインパクトある周知を行うための準備や周知活動も同時に行います。そして、日本青年会議所本会、関東地区協議会、神奈川ブロック協議会という会員同士の最高の出逢いの場となり、会員がともに学び合う場ともなる出向を選択した会員には、成長の機会となるようにともに全力で支援していきます。

ともに基盤となる組織運営へ向けて

青年会議所は、職業や環境、考え方が異なる人が集まっている組織であり、他の団体にない特徴があります。その一つに、組織として皆がともに同じ目的へ事業を行っていくために、事業の議案書を、理事会を通じて徹底して議論を行うことがあります。だからこそ、当会議所の運動を市民や企業、市民団体に拡げていくには、適切な会議が適切に行われる必要があります。そのためには、当会議所運動の揺るがない根幹となる組織運営を適切に設えるとともに、当会議所では定められた規則に則り最高意思決定機関である総会、事業の内容を議論する理事会といった重要な会議を時代に即した方法で運営していきます。
まずは、当会議所の運動、2023年度体制を新年にまちの皆様、当会議所の先輩諸氏の皆様に発信するとともに、本年度の事業に関わって頂けるように設え、誰もがまた来てみたいと思う最高の鎌倉のおもてなしを、会員一人ひとりと、皆様に五感で感じて頂く事業を行います。
次に、本年度は県議会議員選挙が行われます。これまで当会議所では各級選挙において公開討論会を開催し、市民の聞きたいテーマについて立候補予定者の意見を聞く機会を提供してきました。市民が立候補予定者の人柄や政策を直接知ることの出来るこの機会を提供することは、市民の誰もが主体的にまちの将来を考えるきっかけを持つための判断材料として非常に有益なものであると考えます。当会議所は、広域自治体である県政の私たちへの影響を改めて考えるきっかけを作るとともに、青年の観点からの見解を立候補者に提言する機会として本年度も公開討論会を開催いたします。
さらに、どんな時代においても同じ志のバトンを脈々と受け継がれてきた当会議所の運動を、途切れることなく次世代へと繋げていく事業を行うことで、歴史や伝統ある鎌倉青年会議所の強固な組織を作り続ける一助と致します。
最後に、当会議所の運動を行ってきた同志の卒業を先輩諸氏だけでなく、多くの仲間達とともにお祝いしともに喜びを分かち合う事業を行うことで、ともに育つ組織の繋がりをさらに強いものにしていきます。

会員一人ひとりとともに会員の資質向上と安心安全な財務基盤を目指して

公益社団法人である当会議所は、専門職をつけず会員の入れ替わりがありながらも適切な財務基盤を毎年行ってきました。本年度も当会議所で会議された運動を、適切な予算により最大限の効果的な事業を行えるように財務を管理していきます。
当会議所の在籍年数も10年以上の会員が少なく短くなってきている傾向があります。そのために、会員としての心構えや議案の作り方、会議の運営方法、当会議所運動の真髄等、当会議所として変えてはいけないもの、時代に合わせて変えていくものの判断が付きにくくなっています。当会議所、青年会議所運動として必要なことや求められているものはなにかということを、会員とともに今の時代に合った方法で歴史と伝統ある当会議所の魂を一人ひとりに伝えていく体制を本年は整えていきます。

おわりに

命は誰にも平等に与えられたものです。だからこそ、一人ひとりが違っていてもいいのです。違いは違いであって間違いではありません。お互いがお互いのことを知り、認識することが、病気やケガとともに生きていく人やそうでない人が必要としていることだと私は思います。この鎌倉の地で、この鎌倉青年会議所という場所で、同じ時間、同じ空間を共有するのは、今しかありません。一瞬一瞬、一分一秒、有限ある時間を大切にして、誰もがともに情熱を持ち、その人らしさを大切にして、ともに理解して、ともに育っていく地域や団体を、ともに創りあげていきます。そして、誰一人取り残さない環境を創ることを、この古都鎌倉から多くの人、企業、団体、地域へと拡がることが出来ると確信しています。
私には大きな夢があります。
病気やケガによる障害の有無に関わらず、子ども達やその家族が笑顔溢れ安心して暮らせる地域を創ることです。
そして、青年会議所にはその夢を叶えてくれる魔法の力があります。
私は、多くの人によって助けられ、ここに立つことが出来、今があります。だからこそ、誰もが当たり前の生活を当たり前に行えない状況や環境が突然訪れようとも、この鎌倉の地域には、すぐに助けを求められる環境や場所があり、当会議所がその礎を地域の皆様とともに創ったと、これからの未来のある子ども達に示していきたいです。それが出来るのが、青年会議所の魔法の力です。その力は、自ら掴みにいかないと発揮されることはありません。今いる会員、これから会員となる青年経済人には自ら考え、自ら進んで掴みにいってほしいです。
病気やケガによる障害の有無だけでなく子どもから高齢者までに、これまで当会議所を築きあげてきた先輩諸氏の想いが繋がれた私たち鎌倉青年会議所の存在意義や、会員一人ひとりの存在意義を今年一年熱く発信し、出逢った人とともに鎌倉の地域を創り上げていきますので、一年間、どうぞ宜しくお願い致します。