理事長所信

2024年度
公益社団法人 鎌倉青年会議所
理事長所信

第60代理事長 森山 桂多

公益社団法人鎌倉青年会議所 まちづくりビジョン
(1991年制定)

「思いやりのある鎌倉 歴史と未来がふれあうまち
 人つどうまち 心かようまち」

公益社団法人鎌倉青年会議所 中期ビジョン
(2014年改訂)

「IZA! 鎌倉」
~刻を紡ぐまち まちが育むひと ひとが創るまち~

2024年度テーマ

「持続可能な変革」

2024年度 スローガン

「未来を切り開く、共に挑戦しよう」

はじめに

 私たち鎌倉青年会議所は「修練」「奉仕」「友情」を基本理念において、青年会員相互の啓発と交流をはかり、地域社会の発展を目指す団体です。これは、鎌倉青年会議所だけでなく、日本全国の青年会議所、そして世界中の青年会議所でも同様です。国も言葉も文化も違う各地の青年会員が同じ理念の基、その活動を行っております。しかし、国や言葉や文化が違う中では、同じものを見たときの感じ方も様々です。雨が降っているのを見て、悲しいと感じる人がいる半面、恵みの雨だと喜びを感じる人もいるはずです。では、私たちは何を見て、誰の事を考え、青年会議所としての活動を行うべきなのでしょうか。観光地として有名な鎌倉から発信される目新しい流行や文化だけでなく、昔から地域に根付く文化も多くあります。仏教もその一つです。その、仏教の考え方の一つ『唯識』に一水四見という言葉がありますが、この言葉は、同じ事象を捉える際に、人それぞれの視点や感じ方が異なることを意味しています。私たち鎌倉青年会議所が、明るい豊かな社会を実現するためには、青年会議所としてだけでなく、様々な角度から課題を捉え、多角的な視点を持ち、物事を正しく理解し、解決を目指す事が重要です。私たちが暮す鎌倉には歴史ある建造物や海や山など豊かな自然もあり、毎年多くの観光客が訪れ、日本国内でも人気のある観光地となっており、それを生業に生活する人も沢山います。その反面、「観光対策とまちづくりの調和」や「地域振興と経済活性化」のような鎌倉固有の課題も存在しています。私たちは、このような魅力と課題が相反する問題についても、正しく把握し、解決に向けて取り組む責任があります。そして、自分自身も含めて、これらの事実を正しく見ることができているのか、改めて問い続ける必要があります。
 私たち鎌倉青年会議所には半世紀を超える長い歴史があります。60年にわたり、その時代、その時代の会員が、まちの課題解決に向けて精力的に活動を続けてきました。関係諸団体、市民の皆様、そして先輩諸氏の偉大な功績にも感謝を捧げつつ、私たちは一層の成長を遂げるために積極的な行動を起こさなければなりません。このまちの発展という大きな目標を掲げ、豊かなまちづくりを目指し活動する青年会議所だからこそ、正しい視点で物事を見つめ、今、どのような活動が必要とされているのかを、まちに向けて発信し、地域の発展を目指すべきだと考えます。過去から学びつつ、その一方で単なる過去の踏襲となることなく、臆せず新たな時代に果敢にチャレンジして参ります。現代は多様性の時代です。こうした多種多様な彩りある時代を向かえた今、鎌倉青年会議所は、新たな価値観と創造性をもって、今までにない運動を展開すべき岐路に立っています。こうした時代にまちの為に何が出来るのか。行動の結果、どのような未来が待っているのか。会員一人一人が未来への期待に心をワクワクさせながら運動を展開する。そして、我々の運動に共感してくれる仲間を少しずつ増やしながら、市民とともに歩む青年会議所として鎌倉の未来を切り開いていきます。

新たな視点のまちづくり

 豊かなまちには、「活気」は重要な要素であると私は考えます。その活気は、そこで住み暮らす人々から生れることに疑いの余地はありません。そして、それは一人一人が、自身のアイデンティティや文化に誇りを持ち、その特徴を大切にする事、自分が暮らしているまちの価値や課題を認識する事。それら共有し合い、多様な価値観を持つ人々が暮している事を理解する事。そして、地域全体で結束力を高める事でより活気は強まります。鎌倉の価値を知り、自らの手でその価値を高めていくという気概こそが我々が地域を巻き込んで醸成させていかなければならないまちづくりの中核であると考えます。
 私たちが暮すこの鎌倉のまちはとても、住みやすいまちです。海や山、歴史ある神社仏閣、文化芸術やスポーツ施設、良好な住環境、自然豊かな公園、利便性の高い交通網などもその魅力を作る要因の一つです。しかし、将来を見据えたとき、今の住みやすいまちの状況に慢心すべきではありません。鎌倉というまちが、将来においても人々から選ばれるように、活力あるまちであり続ける必要があります。
 鎌倉の価値の根源は、鎌倉の風土や文化、歴史の他、日々の暮らしにあるはずです。それらに着目し、まちに根付いたストーリーを発掘し、まちの内外の人々からの共感を得て、まちの活性化につなげることが必要です。これまでとは違った鎌倉の魅力を発信し、共感して頂けるような事業を作って参ります。次に、当会議所設立5周年の記念事業として開催された慈善茶会は、当会議所の行うまちづくり事業の中心的な事業へと発展し、今年で56回目の開催をさせて頂きます。これもひとえに茶道裏千家千宗室御家元様をはじめとするご宗家の皆様、毎年素晴らしい会場をお貸しいただくと共に多大なるご協力を頂いております大仏殿高徳院佐藤孝雄住職様、地域の協働団体の皆様、そして会場にお越し下さいますお客様のお力添えのおかげです。長く続く鎌倉青年会議所を代表する慈善茶会という継続事業だからこそ、変化や工夫が必要です。慈善茶会という一つのコンセプトのもと、私たちが今、何を行うべきなのか、何を発信すべきなのか。変わらない事だけにフィーチャーするのでなく、私たちが慈善茶会を行う意義を改めて考え、青年会議所らしい慈善茶会を構築し、幅広い人たちにその魅力や歴史を体感してもらう機会を作り上げていきます。そして、私たちだけでなく、様々な方のご協力のもと、この事業が開催出来ていることを理解し、関係する全ての方に対して心より感謝を申し上げる機会を作ることで、より繋がりを強固なモノとしていきます。そして最後に、魅力の側面にしか気づいていなかった、まちの新たな魅力にスポットを当て魅力の発信を行います。私たちだからこそ、一人一人がまちの創造者であるとの意識を持ち、鎌倉のまちの価値の本質に迫り、鎌倉にまつわる人の想いをストーリーとして活かして、新たな価値を創出することができるはずです。まちづくりの事業から新たなこのまちの魅力を見出すと共にこのまちの価値を高め、一人一人が活気あるまちを創っていく担い手になる未来に寄与していきます。

仲間と共に成長する

 青年会議所に入会して活動をすることによって、様々なモノを手に入れることが出来ます。
まちの未来を考え行う事業の構築の経験や、地域と地域団体との協力の中で生まれる新しい経験など多岐にわたります。その中でも、大きなものの一つが「仲間」であることは間違いないでしょう。それは青年会議所で活動している一時だけでなく、卒業してからも一生涯通じあえるかけがえのない仲間です。
しかしながら、近年の技術の進歩や世界を取り巻く状況の影響を受け、学校や企業だけでなく、我々青年会議所の活動も以前とは異なる形に変化をしてきました。直接膝を突き合わせて議論する機会が減り、画面越しに仲間を見る事も習慣化しました。様々な事が便利になった反面、青年会議所で得られる経験値の幾つかが削がれてしまっている現状にあります。会員同士の繋がりが希薄化していくということは、青年会議所にとって、組織力の弱体化に繋がりかねません。それは鎌倉青年会議所だけでなく、企業や団体も同じではないでしょうか。目まぐるしく変化する世流や課題に対応することに追われ、これまで、組織の中で培われてきた熱意や技術もまた、継承する機会が減り、人材の育成も難しくなっています。しかし活発に活動する組織を継続する為には、人材の育成は不可欠です。未来の組織を担う人材の育成を目的に、青年会議所内外を問わず、共にまちの次世代を担う人材の育成の為の事業を行います。次に、地域には様々な企業や団体、市民がおり、感じ方や悩みも様々です。多くの場合は、個々で解決策を考え、模索しトライアンドエラーを繰り返すことで、課題の解決を目指します。しかし、ステークホルダーだけでなく、全く違った新しい繋がりから生れるアイデアには大きな可能性があることを私たちは知っています。これまでとは違った新しい交流の場を構築し、企業や団体、市民の皆様と共にそれぞれの課題に対し、新たな解決策を見つけるきっかけを作って参ります。そして最後に、私たちは、まちの課題の解決を目指すうえで、自身の身近なところに目を向けることも必要です。今、改めて自身とこの青年会議所を見つめ直し、一方向だけではなく、様々な視点で正しく捉えることが重要です。これは青年会議所の会員だけでなく、組織に所属する方にも同じことが言えます。改めて、一人一人が自身の目標や今自分がやるべき事は何なのか、そして組織について真剣に考え、一つ一つのアクションにつなげていく事が重要です。自身の関わる組織に、家族にと還元していけるような学びの機会を作って参ります。
 もちろん、楽しい時だけでは無いはずです。時には困難な状況に立ち向かうこともあるでしょう。そんな時のために仲間がいます。鎌倉青年会議所内外で活躍する仲間を支え、ともに助け合い、ともに磨き合う事で、人として何倍にも成長し、地域のリーダーになっていく。そんな姿を見せることで新たな仲間をつくっていきます。

創立60周年を迎えて

 1964年、先輩諸氏の英知と勇気と情熱によって、鎌倉青年会議所は誕生しました。今現在、鎌倉青年会議所に所属しているすべての会員が、今日までこの鎌倉のために運動を継続してこられたのは、歩みを紡いで来られた先輩諸氏の皆様が残してくださった、地域をより良くしたいという想いが、鎌倉青年会議所の根底に深く根づいているからです。創立60周年を迎えるにあたり、綿々と受け継がれてきた想い、歴史を改めて見つめ直すことで、会員一人一人が「この地域における青年会議所の存在」を考え、自分なりの地域と青年会議所を模索し、そして個々の変化が青年会議所の新たな一歩に繋がると考えております。60年という長い歴史を振り返り、敬意をもって今日までの感謝を伝えるとともに、これまでの踏襲だけではなく、鎌倉青年会議所の次なる10年の発展を、お約束します。私たち鎌倉青年会議所と共に歩んで下さる皆様に、更なる発展に向けた決意を伝え、鎌倉の豊かな文化や歴史の中で培われるアイデンティティや独自性、そこで生活する人たちが輝くまちの未来に向けて歩みを進めて参ります。そして、地域に住まう方々が喜び一瞬でも笑顔になって頂ける機会を作り、この地域に青年会議所のインパクトを与え、今後の鎌倉青年会議所の発展を目指します。そして本年度を含め、私たち青年会議所の60年にわたる運動を先輩諸氏と共に振り返り、歴史やその時代背景、我々、鎌倉青年会議所の価値を広く後世に伝えて参ります。これらの運動を通して、より一層、鎌倉青年会議所が運動を強く推進していく為の一助になると信じています。

信頼を得る組織づくり

 鎌倉青年会議所は、公益社団法人として、法令の遵守と透明性を保った組織運営を心掛け、地域に寄り添って活動を展開しています。そうした活動を支える根幹は会議の組織運営だと考えます。青年会議所という名前の通り、私たちは会議を通し物事を考え、しっかりと検討した上で、活動に移すことで、地域社会との信頼を築いてきたのだと考えています。
 私たちは積極的に活動を発信し、地域の人々に気づきや問題提起を促し、まちの未来を考える機会を提供してきました。会員同士が異なる視点を持ちながらも共通の目標に向かって進むための会議法や組織運営を重視し、多様性を尊重し合うことで、60年にわたりこのまちでの運動が継続しています。本年度、鎌倉青年会議所として最初の事業では、60周年を迎えたこの鎌倉青年会議所が一丸となって活動し、地域の発展と社会に貢献するため、未来に向けて前進していく様を力強く発信していきます。また、青年会議所の理念に基づき、効率的な組織運営を行い、業種や性別、生活スタイルの違いを超えて全メンバーが活躍できる環境を築き上げることで、誰もが活躍できる社会の実現を目指します。
 そして、本年だけでなく未来へと視野を広げ、持続的にこのまちで力強く運動を続ける組織運営を構築します。近年、青年会議所は入会してから卒業するまでの在籍期間が短いメンバーが増えており、新入会員には組織の役割や意義を理解し、能力を最大限に発揮できるようサポートしていきます。そして、最後に新入会員のサポートだけではなく、定年制である鎌倉青年会議所にとっての、現役を共にした会員の卒業は組織力の減少ではなく、知識の保存の機会と捉え、卒業を称えるとともに、より一層、青年会議所の糧となるよう基盤強化に努めます。本年度、鎌倉青年会議所は、誰もが成長できる組織を築き、青年会議所の運動をより一層強化して参ります。そしてこの鎌倉青年会議所が今後、10年、20年と続く持続可能な組織であり続けられるよう、組織の進化発展に向けビジョンとミッションを明確化し、地域社会や他の団体との連携を深め、社会的課題に対する影響力と貢献度を高める事を目指し、変革を行って参ります。

魅力を発信する神奈川ブロック大会鎌倉大会

 本年、私たちは日本青年会議所関東地区神奈川ブロック協議会の最大の運動発信の場でもある神奈川ブロック大会の主管LOMを2009年以来、15年振りに務めます。ブロック大会を開催することによる主管益、主催者益、地域益、参加者益、社会益の5つの益を追い求め、しっかりとこのまちに根付く運動を行うことが重要だと考えます。これは、会員を大きく成長させ、組織としての力を向上し、そして地域の市民意識を変革させる、まさしく地域の活性化を推進する効果的な手段となります。鎌倉青年会議所、神奈川ブロック協議会、そして市民、行政、企業、各種団体の協働により、地域が一体となり、市民の方々と触れ合い鎌倉青年会議所を身近に感じていただけるような運動にすると共に、鎌倉の魅力を県内全域へと発信し、周辺地域の方々が楽しんで参加する事業を展開し、大きな交流の輪を更に広げていきます。また、発信すべき鎌倉の魅力は自然や歴史、文化だけではありません。それは、人、です。そうした風土の中で育った人にも大きな魅力があると考えるからです。その一方で、働き手世代の地元離れという課題も存在しています。そうした課題にも果敢にチャレンジしていきます。そして、ブロック大会鎌倉大会を主軸として、鎌倉市や市民の人々の未来を夢が溢れるものにするために、今何を求められているのかをしっかり考え、鎌倉青年会議所が地域から必要とされ永続する団体になるとともに、若い力で地域を牽引し共に未来を創る運動を展開してまいります。
 この大会において県内各地の多くの仲間と共に協力して研鑽し合いながら、共通の目的を持って事業を構築し、その過程で貴重な学びを得て個人の成長へと繋げてまいります。また会員の成長は組織の資質の向上にも繋がり、まちの未来に繋がります。ブロック大会主管という好機を上手く活用し、まちの課題と魅力を調和させ課題を解決しながらもまちの魅力を県内各地域に向けて広く発信できるように取り組んでまいります。そして、ブロック大会が新たな同志を生むきっかけとなり、さらにメンバーの成長とこのまちの発展へと繋がる機会とするべく努めてまいります。

おわりに

 本年度、鎌倉青年会議所は60周年を迎え、新たな一歩を踏み出す重要な1年となります。さらに15年ぶりに鎌倉の地で開催となる神奈川ブロック大会主幹LOMとして、ブロック大会では、地域にインパクトを残す重要な機会を得ることができました。私自身、そのような年に理事長としての機会を頂いたことに大変感謝しております。しかし、大きな事象にのみ目を向けるのではなく、一つ一つの機会に目を向け、信頼できる仲間と共に、今私たちだからこそできる事を考え、一歩一歩、丁寧に歩んでいく事をお約束致します。この鎌倉青年会議所が60年にわたり、鎌倉の地で運動を続けられている理由、組織のあり方、先輩諸氏から私たち現役会員へと連綿と受け継がれてきた目の前に広がる財産。1969年から続く慈善茶会という私たち、鎌倉青年会議所を代表する事業など、私たちが大切にすべきものは無限に存在します。青年会議所は20歳から40歳までが所属することができる団体で、そして役割についても単年度制を用いております。だからこそ、この限られた時間を最大限に使い、本年度1年間、仲間と共にこの鎌倉のまちのために、走り切って参ります。
 今、目の前に広がる世界は新しい技術が次々と生まれるとともに、多くの問題を抱える、先行きの見えないものかもしれません。一人の力では一歩踏み出すことさえ困難な世界でも、私たち一人一人がさらに成長したうえで心を一つにすれば、鎌倉青年会議所に立ち向かえない問題はありません。むしろ、新たな問題に誰よりも早く挑戦し解決することで、地域に大きなインパクトを与える好機があります。組織力を強め、顕在化し続ける課題に挑戦し続けることを忘れず、新たな世界を開拓する1年として参ります。一年間、どうぞ宜しくお願い申し上げます!